ある日、お子さまがぽつりと言います。
この一言を聞いたとき、保護者の方はどう感じるでしょうか。驚き、焦り、不安——さまざまな感情が押し寄せるはずです。
しかし、まず知っておいていただきたいことがあります。
お子さまが「わからない」と口に出せたこと自体が、実は非常に大きな一歩だということです。
成績が低迷している多くの生徒は、「わからない」と言えずに黙ったまま時間が過ぎていきます。授業中は理解しているフリをし、テストの点が悪くても「たまたまだよ」とごまかす。保護者の方が異変に気づいたときには、つまずきが何ヶ月分も蓄積している——このパターンが圧倒的に多いのです。
だからこそ、「わからない」と打ち明けてくれた今が、立て直しの最大のチャンスです。
この記事では、「授業がわからない」状態を放置するとどうなるかを整理したうえで、つまずきの起点を正確に特定する具体的な方法をお伝えします。
中高一貫校の授業は、前の単元を理解している前提で次の単元に進みます。特に数学と英語は典型的な積み上げ型の教科で、途中のどこかでつまずくと、それ以降のすべてが理解できなくなるリスクがあります。
たとえば数学で「一次方程式」の理解があいまいなまま「連立方程式」に入ると、連立方程式の解法がまったく身につきません。さらに「二次方程式」「関数」と進むにつれて、授業の内容は完全に意味不明なものになっていきます。
「ちょっとわからない」が「全然わからない」に変わるまでの時間は、思っている以上に短いのです。
授業の内容が理解できなくなると、教室にいる時間が苦痛になります。先生が何を言っているかわからない。黒板に書かれていることの意味がわからない。周りの生徒は頷いているのに、自分だけ取り残されている。
この状態が毎日5〜6時間続くのは、大人であっても相当なストレスです。中学生・高校生にとってはなおさらです。
そしてこのストレスが、「学校に行きたくない」「授業が退屈」「どうせ自分にはできない」という気持ちにつながっていきます。
最も深刻なのは、つまずきが蓄積するにつれて、「今さらわからないとは言えない」という心理が働くことです。
「こんな基本的なことがわかっていないと知られたら恥ずかしい」「先生に質問したら呆れられるかもしれない」——こうした恐れが、助けを求める行動を完全に封じてしまいます。
お子さまが「わからない」と言ってくれた今は、この悪循環に入る手前の段階です。ここで適切に動けば、回復は十分に可能です。
最もシンプルで効果的な方法です。
過去の定期テストの答案を、教科ごとに古い順から並べてください。そして、点数が大きく下がったタイミングを探します。
たとえば数学であれば、中1の2学期中間までは70点台だったのが、中1の2学期期末で50点に落ちている。この場合、中1の2学期後半に扱った単元(たとえば「比例・反比例」「空間図形」など)につまずきの起点がある可能性が高いです。
答案が手元にない場合は、成績表の点数推移だけでも構いません。「いつから下がり始めたか」を特定するだけでも、大きな手がかりになります。
もう少し細かくつまずきの位置を特定したい場合、お子さまに該当教科の教科書を渡して、最初のページから順にめくってもらいます。
「このページの内容はわかる?」「ここは大丈夫?」と1章ごとに確認していくと、あるページで「ここからよくわからない」という反応が出るはずです。そこがつまずきの起点です。
この方法のポイントは、お子さまを試すような雰囲気を出さないことです。「一緒にどこが難しいか探してみよう」という姿勢で、リラックスした状態で確認してください。
答案の確認や教科書のチェックよりもさらに正確なのが、実際に問題を解いてもらう方法です。
つまずきが疑われる単元の基本問題(教科書の例題レベル)を3問だけ用意し、解いてもらいます。制限時間は設けず、わからなければ「わからない」と言ってもらって構いません。
3問のうち何問解けるかで、その単元の理解度がおおよそ判断できます。
3問とも解ければ、その単元はクリア。もう1つ先の単元に進みます。1〜2問しか解けなければ、その単元の理解が不完全。1問も解けなければ、さらに前の単元に遡る必要があります。
この作業を繰り返すと、「ここまでは大丈夫だけど、ここからわからなくなっている」という境界線が見えてきます。
つまずきの起点が特定できたら、そこに戻って学び直すことが最も効率的な対策です。
しかし、お子さまにとって「中1の内容に戻る」ことは心理的なハードルが高い場合があります。「自分はそんなに遅れているのか」とショックを受けたり、「そんな簡単なところからやるのは嫌だ」と拒否したりすることもあります。
ここで保護者の方にお伝えしたいのは、「戻ることは遠回りではなく近道だ」という事実です。
基礎がぐらぐらの状態で今の授業範囲をいくら勉強しても、砂の上に家を建てるようなもので、すぐに崩れてしまいます。しっかりとした土台を作り直してから積み上げるほうが、結果的に早く成績が回復します。
お子さまには「今の単元がわからないのは当然。前の部分を補強すれば一気にわかるようになるよ」と伝えてあげてください。
つまずきの起点が見つかっても、「じゃあ復習してね」とだけ言うのは不十分です。何を使って、どの順番で、1日にどれくらい取り組むのかを、できる限り具体的に決めてください。
たとえば「体系数学の第4章、例題1〜10を毎日2問ずつ。1日15分で2週間で終わる計算」というレベルまで落とし込めると、お子さまも取り組みやすくなります。
もしご家庭だけでこの計画を立てるのが難しい場合は、学校の先生や塾の講師に相談してみてください。
お子さまが「授業がわからない」と言ってくれたとき、それはSOSであると同時に、解決への第一歩でもあります。
やるべきことは明確です。つまずきの起点を見つけ、そこに戻って学び直す。これだけで、「全然わからない」が「あ、こういうことだったのか」に変わる瞬間が必ず訪れます。
武蔵野予備校FLEXでは、入塾時に東大生講師がお子さまの理解度を丁寧にチェックし、つまずきの起点を正確に特定します。「今の授業がわからない」原因が半年前の単元にあるのか、1年前にあるのかによって、学習プランはまったく違ったものになります。
「授業がわからない」と言われたら、まずはその言葉を受け止めてあげてください。そして、原因を一緒に探すところから始めましょう。
武蔵野予備校FLEXでは、現役東大生講師による無料の学習相談を実施しています。お子さまの成績状況や学校のカリキュラムをお聞きしたうえで、最適な学習プランをご提案します。